写真は取り壊す少し前に、旧北中植物商店(大沢6-2-19)の最後の庭の手入れを行なったときのものです。
コナラ、クヌギ、ソロ、エゴノキ、シラカシなど、雑木林に代表される木々を植えた北中植物商店の庭は、野川の畔の景色を意識して作りました。大きく武蔵野の景色と言って良いと思いますが、雑木林の世界観です。
昔はこれらの木々を育てながら伐採して、薪などの燃料として使っていました。そのための林が“雑木林”というもので、株立ちの木は、その雑木林の景色のひとつの姿だったりします。
コナラやクヌギが群生する中に、その他の雑木が幾分入り混じって生えている。そんな武蔵野の景色を庭に取り込んだのは、私にとっての大師匠 飯田十基さんです。
本物の雑木の庭とは、この武蔵野の姿なのかもしれません。
飯田さんの雑木の庭を実際に見ることは今となっては難しいのですが、例えば、溝口健二監督の武蔵野夫人という古い映画に当時の野川の景色が出てきて、コナラなどの木々が風に揺られる姿を観ていると、なんだか勝手に繋がりを感じてしまいます。
それから数十年。時代が進むにつれて、様々な雑木の庭が出来ています。かくいう自分もそんな様々な雑木の庭を追い求めているひとりです。
その土地とその方の暮らしに自然と溶け込むような、そんな表現をこれからも考えていきたいと思っています。
コナラやクヌギの木々たちは、移植することも考えましたが、時期的なことなどから断念しました。なので雑木林の教えに習って、新しい場所で将来、導入するであろう薪ストーブの為の薪として、伐採して取っておくことに決めました。
新しくなる北中植物商店も、少し土のスペースは取れそうなので、その土地に溶け込むような、庭を考えたいと思っています。